従業員から介護の相談を受けたとき、会社が確認したいこと

小さな会社こそ早めに整えたい、仕事と介護の両立支援

「親の介護で、少し休みが必要になるかもしれません」
「通院の付き添いがあるので、勤務時間を調整できませんか」
「急に呼び出されることが増えそうです」
「しばらく残業が難しくなるかもしれません」

従業員からこのような相談を受けたとき、会社としてどのように対応すればよいか迷うことがあります。

育児と違い、介護はある日突然始まることがあります。
親が入院した。
転倒して一人暮らしが難しくなった。
ケアマネジャーとの面談が必要になった。
通院や施設探しを家族で分担することになった。

このような状況になると、従業員本人も、仕事を続けながらどう対応すればよいのか不安を感じています。

小さな会社では、一人が急に休んだり、勤務時間を変更したりすると、現場や他の従業員への影響も大きくなります。
だからこそ、介護の相談を受けたときは、早めに状況を整理し、会社としてできる対応を確認することが大切です。

今回は、従業員から介護の相談を受けたときに、会社が最初に確認したいポイントについてお伝えします。

介護の相談は「突然」やってくることがあります

介護は、前もって予定を立てにくいものです。

ある日突然、親や家族の体調が悪くなる。
病院から呼び出しがある。
介護認定の手続きが必要になる。
家族で介護の分担を話し合うことになる。

このようなことは、どの従業員にも起こり得ます。

特に40代以降の従業員は、親の介護に直面する可能性が高くなります。
厚生労働省は、2025年4月1日から、介護に直面する前の早い段階、たとえば40歳に達する年度または40歳の誕生日から1年間に、介護休業制度や介護両立支援制度等に関する情報提供を行うことを事業主の義務としています。

つまり、介護の相談は「相談が来てから初めて考える」のではなく、会社として早めに制度を知らせ、相談しやすい環境を整えておくことが求められています。

まずは、落ち着いて状況を聞く

従業員から介護の相談を受けたとき、最初に大切なのは、すぐに結論を出すことではありません。

まずは、現在の状況を落ち着いて聞くことです。

たとえば、次のような点を確認します。

  • 誰の介護なのか
  • どのような状態なのか
  • 通院付き添いが必要なのか
  • 入院・退院の予定があるのか
  • 介護認定やケアマネジャーとの面談があるのか
  • どのくらいの頻度で休みや早退が必要になりそうか
  • 一時的な対応なのか、長期的に続きそうなのか
  • 家族で分担できるのか
  • 本人は仕事を続けたいと思っているのか

ここで大切なのは、従業員にすべてを細かく話させようとしすぎないことです。

介護の内容には、家族の病気や生活状況など、非常にプライベートな情報が含まれます。
会社として必要な範囲で、勤務に影響する部分を確認する姿勢が大切です。

「辞めるしかない」と思わせないことが大切です

介護の相談をする従業員の中には、すでに
「会社に迷惑をかけるのでは」
「休みが増えるなら辞めるしかないかもしれない」
と考えている方もいます。

会社が最初に、
「それは困る」
「他の人に迷惑がかかる」
「いつまで続くのですか」
という反応をしてしまうと、従業員は相談しにくくなってしまいます。

もちろん、小さな会社では人員体制の問題があります。
すべての希望をそのまま受け入れることが難しい場合もあります。

それでも、まずは
「仕事を続けるために、どのような方法があるか一緒に整理しましょう」
という姿勢で受け止めることが大切です。

介護離職を防ぐためには、従業員が早めに相談できること、そして会社が制度や働き方の選択肢を説明できることが大切です。

会社が確認したい主な制度

従業員から介護の相談を受けたときは、会社として利用できる制度を確認しましょう。

代表的なものに、介護休業、介護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、介護のための所定労働時間の短縮等の措置などがあります。

1. 介護休業

介護休業は、要介護状態にある対象家族を介護するために、まとまった期間休業できる制度です。

厚生労働省の介護休業制度特設サイトでは、介護休業について、対象家族1人につき3回、通算93日まで取得できると案内されています。対象家族には、配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母などが含まれます。

ここで大切なのは、介護休業を「従業員本人がずっと介護をするための期間」とだけ考えないことです。

厚生労働省も、介護休業は、介護サービスの手配や家族間の分担、仕事と介護を両立できる体制を整えるための準備期間として活用することを案内しています。

つまり、会社としては、
「どのくらい休むのか」
「休業後にどのように復帰するのか」
「勤務を続けるためにどのような調整が必要か」
を一緒に整理することが大切です。

2. 介護休暇

介護休暇は、通院の付き添い、介護サービスの手続き、ケアマネジャーとの打合せなど、短時間・単発の用事に対応しやすい制度です。

厚生労働省は、介護休暇について、対象家族が1人の場合は1年間に5日まで、2人以上の場合は10日まで取得でき、1日または時間単位で取得できると案内しています。また、介護休暇は年次有給休暇とは別に取得させる必要があり、有給か無給かは会社の規定によるとされています。

介護の相談では、いきなり長期休業ではなく、
「月に数回、通院の付き添いがある」
「ケアマネジャーとの面談で数時間抜けたい」
「介護サービスの手続きで半日休みたい」
というケースもあります。

そのような場合は、介護休暇の活用を検討することになります。

3. 残業や深夜勤務の制限

介護をしている従業員にとって、残業や深夜勤務が難しくなることもあります。

厚生労働省の法改正のポイントでは、介護両立支援制度等として、介護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、介護のための所定労働時間の短縮等の措置が挙げられています。

小さな会社では、
「急に残業できないと言われると困る」
と感じることもあると思います。

だからこそ、早めに相談してもらい、どの曜日・時間帯なら勤務できるのか、繁忙期にどう対応するのか、他の従業員との分担をどうするのかを話し合うことが大切です。

4. 短時間勤務・時差出勤・テレワーク等

介護の状況によっては、短時間勤務や時差出勤、勤務日数の調整などが必要になることもあります。

2025年4月1日からは、要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワーク等を選択できるよう、事業主に措置を講ずることが努力義務化されています。

もちろん、業種や仕事内容によってはテレワークが難しい場合もあります。

ただ、事務職で一部在宅対応ができる、始業・終業時刻を少し調整できる、週に数日だけ勤務時間を変えられるなど、会社の実情に応じて検討できることがあるかもしれません。

2025年4月から、会社の対応義務が強化されています

介護に関する会社の対応は、2025年4月から強化されています。

厚生労働省は、2025年4月1日から、介護離職防止のため、事業主に対して、介護休業・介護両立支援制度等を利用しやすい雇用環境の整備、介護に直面した旨を申し出た労働者への個別周知・意向確認、40歳等の早い段階での情報提供などを義務化したと案内しています。

特に重要なのは、従業員から
「家族の介護が必要になりました」
という申し出があった場合です。

このとき会社は、介護休業制度や介護両立支援制度等について個別に知らせ、利用の意向を確認する必要があります。周知する事項には、介護休業に関する制度、介護両立支援制度等、申出先、介護休業給付金に関することが含まれます。

つまり、介護の相談を受けたときに、
「うちには制度があるかわからない」
「就業規則を見ないと説明できない」
という状態ではなく、会社として説明できる準備をしておくことが必要です。

会社が最初に整えたいこと

介護対応というと、難しい制度をすべて完璧に整えなければならないように感じるかもしれません。

でも、まずは次のようなところから始めるとよいと思います。

1. 相談先を決める

従業員が介護のことで困ったとき、誰に相談すればよいのかを決めておきましょう。

たとえば、

  • 社長
  • 総務担当者
  • 店長・現場責任者
  • 外部専門家

などです。

「介護のことは、どこに相談すればいいのかわからない」
という状態だと、従業員はぎりぎりまで言い出せなくなります。

相談先を決め、従業員に周知しておくことが大切です。

2. 社内規程を確認する

育児・介護休業規程や就業規則に、介護休業・介護休暇などの制度がきちんと反映されているか確認しましょう。

特に、2025年4月からの改正により、介護休暇について、継続雇用期間6か月未満の労働者を労使協定により対象外とする仕組みは廃止されています。

古い規程をそのまま使っている場合、現在の法律や実際の運用と合っていない可能性があります。

3. 個別周知・意向確認の流れを決める

従業員から介護の申し出があったとき、会社が何を説明し、どのように意向を確認するのかを決めておきましょう。

厚生労働省は、個別周知・意向確認の方法として、面談、書面交付、FAX、電子メール等を挙げています。ただしFAXや電子メール等は、労働者が希望した場合に限るとされています。

小さな会社では、口頭で話して終わりになりがちですが、説明した内容や本人の希望を記録しておくと安心です。

4. 勤務調整の選択肢を考えておく

介護の状況は人によって違います。

毎日介護が必要な人もいれば、月に数回の通院付き添いが中心の人もいます。
急な呼び出しが多い人もいれば、一定期間だけ集中的に対応が必要な人もいます。

会社として、次のような選択肢を考えておくと対応しやすくなります。

  • 介護休暇
  • 介護休業
  • 始業・終業時刻の調整
  • 短時間勤務
  • 残業を控える
  • 勤務日の調整
  • 担当業務の一時的な見直し
  • テレワークが可能な業務の切り出し
  • 他の従業員との業務分担

すべてを認めなければならない、という話ではありません。

会社の業務に支障が出ない範囲で、本人が仕事を続けられる方法を一緒に考えることが大切です。

相談を受けたときの対応の流れ

従業員から介護の相談を受けたときは、次のような流れで整理すると対応しやすくなります。

1. まず話を聞く

どのような介護状況なのか、勤務にどのような影響がありそうかを確認します。

2. 本人の希望を確認する

休みたいのか、勤務時間を調整したいのか、残業を控えたいのか、しばらく様子を見たいのかを確認します。

3. 利用できる制度を説明する

介護休業、介護休暇、残業や深夜勤務の制限、短時間勤務など、利用できる制度を説明します。

4. 会社として対応できることを整理する

本人の希望と会社の業務体制を照らし合わせて、現実的な対応を検討します。

5. 記録を残す

相談内容、説明した制度、本人の希望、会社としての対応方針を記録しておきます。

6. 定期的に見直す

介護の状況は変わることがあります。
一度決めて終わりではなく、必要に応じて勤務の調整や制度利用を見直しましょう。

介護の相談で気をつけたい言葉

介護の相談を受けたとき、会社側が何気なく言った言葉で、従業員が相談しにくくなることがあります。

たとえば、

「いつまで続くの?」
「他の人も大変だから」
「家族で何とかできないの?」
「休まれると困る」
「正社員だから責任を持って」

このような言い方は、従業員を追い詰めてしまうことがあります。

もちろん、会社として困ることや調整が必要なことはあります。
ただ、最初の段階では、まずは状況を聞き、仕事を続けるためにどうするかを一緒に考える姿勢が大切です。

他の従業員とのバランスも大切です

小さな会社では、一人の勤務を調整すると、他の従業員に負担がかかることがあります。

そのため、介護中の従業員だけでなく、職場全体のバランスも考える必要があります。

たとえば、

  • 業務の分担を見直す
  • 属人化している仕事を整理する
  • シフトを早めに調整する
  • 一時的に優先業務を絞る
  • 他の従業員にも制度の趣旨を説明する
  • 不公平感が出ないようにルールを明確にする

介護への配慮は大切ですが、他の従業員に過度な負担がかかると、職場全体の不満につながることもあります。

会社として、個別対応と全体のバランスを両方見ていくことが大切です。

介護離職を防ぐことは、会社にとっても大切です

介護のために従業員が退職してしまうことは、本人にとっても会社にとっても大きな負担です。

従業員にとっては、収入やキャリアが途切れることになります。
会社にとっては、経験のある人材を失うことになります。

特に小さな会社では、一人ひとりの存在が大きいものです。

だからこそ、介護の相談を受けたときに、
「辞めるか、続けるか」
の二択にしないことが大切です。

休む期間を作る。
勤務時間を調整する。
残業を減らす。
通院付き添いの日だけ休めるようにする。
一時的に担当業務を見直す。

このように、仕事を続けるための選択肢を一緒に考えることが、介護離職の防止につながります。

チェックポイント

従業員から介護の相談を受けたとき、会社で確認したいポイントをまとめます。

  • 介護の相談先を決めている
  • 介護休業・介護休暇などの制度を説明できる
  • 2025年4月改正に対応した規程になっている
  • 介護の申し出があったときの個別周知・意向確認の流れを決めている
  • 40歳等の従業員への情報提供を行っている
  • 相談内容を記録する方法を決めている
  • 介護休暇の有給・無給の扱いを規程で明確にしている
  • 残業や深夜勤務の制限について確認できる
  • 短時間勤務や勤務時間の調整方法を検討している
  • 他の従業員への負担や業務分担も考えている
  • 育児・介護休業規程や就業規則を見直している
  • 従業員が相談しやすい雰囲気を作っている

ひとつでも不安がある場合は、早めに見直しておくと安心です。

まとめ

従業員から介護の相談を受けたとき、会社として大切なのは、まず話を聞き、状況を整理することです。

介護は突然始まることがあります。
そして、いつまで続くか見通しが立ちにくいこともあります。

だからこそ、会社として、

  • 相談先を決める
  • 制度を説明できるようにする
  • 個別周知・意向確認の流れを整える
  • 勤務時間や休暇の調整方法を考える
  • 育児・介護休業規程を見直す
  • 相談内容を記録する
  • 職場全体の業務分担も確認する

ことが大切です。

「従業員から介護の相談を受けたが、どう対応すればよいかわからない」
「介護休業や介護休暇の制度を説明できるか不安」
「育児・介護休業規程が今の法律に合っているか確認したい」
「小さな会社でもできる両立支援のルールを整えたい」
「40歳等の従業員への情報提供や個別周知・意向確認の流れを作りたい」

このようなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

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