雨の日・台風の日、現場を休みにするときの労務対応
建設会社が決めておきたい連絡・給与・休業のルール
「雨で現場が中止になった日は、給与を払う必要がありますか?」
「朝集合したけれど、現場判断で作業中止になった場合はどうなりますか?」
「台風で休みにした日は、有給休暇にしてもらってもいいですか?」
「日給の従業員と月給の従業員で、扱いを変えてもいいのでしょうか?」
このような疑問が浮かんだことはないでしょうか?
建設現場では、雨、台風、強風、積雪、猛暑など、天候によって作業ができなくなることがあります。
特に屋外作業が中心の現場では、会社としても安全を考えて、作業を中止する判断が必要になる場面があります。
一方で、現場を休みにしたときに問題になりやすいのが、
「その日の給与をどうするか」
「休業手当が必要なのか」
「有給休暇として処理してよいのか」
という点です。
今回は、建設会社が、雨の日・台風の日の現場中止で慌てないために、決めておきたい労務対応のポイントをお伝えします。
建設業では「天候による現場中止」が起こりやすい
建設業では、天候の影響を受けやすい仕事が多くあります。
たとえば、
- 屋根工事
- 外壁工事
- 足場作業
- 解体工事
- 舗装工事
- 土木工事
- 資材搬入
- 高所作業
などは、雨や強風、台風の接近によって、安全に作業を続けることが難しくなる場合があります。
このとき大切なのは、
「天気が悪いから、その日は各自判断で」
とあいまいにしないことです。
誰が現場中止を判断するのか。
何時までに連絡するのか。
集合後に中止になった場合はどうするのか。
給与や休業手当の扱いはどうするのか。
こうしたルールが決まっていないと、毎回その場で判断することになり、従業員との認識違いが起こりやすくなります。
まず決めたいのは「誰が・いつ・どう連絡するか」
雨天や台風で現場を中止する可能性がある場合、まず決めておきたいのは連絡ルールです。
たとえば、
- 前日の何時までに判断するのか
- 当日の朝に判断する場合、何時までに連絡するのか
- 連絡手段は電話、LINE、メールのどれにするのか
- 既読確認や返信をどうするのか
- 連絡がつかない場合はどうするのか
- 元請からの連絡を誰が受けるのか
- 下請や協力会社への連絡は誰が行うのか
建設現場では、朝早くから動くことも多いため、連絡が遅れると従業員がすでに自宅を出てしまっていることがあります。
また、現場に直行する人、会社に集合してから向かう人、資材を積んでから向かう人など、働き方が分かれている場合もあります。
そのため、雨天・台風時の連絡ルールは、できるだけ具体的に決めておくことが大切です。
朝集合した後に中止になった場合
建設業でよくあるのが、朝は集合したものの、現場に着いてから中止が決まるケースです。
たとえば、
「朝の時点では作業できそうだった」
「現場に行ったら、元請から中止と言われた」
「資材搬入ができず、作業ができなくなった」
「雨が強くなり、安全上作業を続けられなくなった」
このような場合、給与計算や休業手当の扱いで迷いやすくなります。
特に、次のような時間をどう扱うかを確認する必要があります。
- 会社に集合していた時間
- 現場までの移動時間
- 現場で待機していた時間
- 作業開始後に中止になった場合の作業時間
- 途中で帰宅させた場合の扱い
これらは、単に「雨だから休み」という話ではなく、実際に会社の指示で集合・移動・待機していたのか、作業していたのかによって整理が必要になります。
現場中止が多い会社では、集合後に中止となった場合の扱いも、あらかじめルール化しておくと安心です。
休業手当が必要になる場合があります
会社の都合で従業員を休ませる場合には、休業手当が必要になることがあります。
労働基準法第26条では、使用者の責めに帰すべき事由により労働者を休業させた場合、使用者は休業期間中、平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければならないとされています。
厚生労働省のQ&Aでも、「使用者の責に帰すべき事由」には、地震や災害などの不可抗力による場合を除き、資材が集まらなかったために作業ができなかった場合や、機械の故障により休業せざるを得ない場合など、会社都合によるものが含まれると案内されています。
つまり、雨や台風が関係している場合でも、
すべてが自動的に無給でよい
とは限りません。
たとえば、
- 元請の都合で現場が止まった
- 資材が届かず作業できなかった
- 会社判断で休みにした
- 他の現場へ振り替えられたのに調整しなかった
- 作業できる業務があったが、会社が休ませた
このような場合は、休業手当の対象となる可能性があります。
一方で、台風や大規模災害などにより、現場そのものが危険で作業できない、交通機関が止まって出勤が困難、行政から避難指示が出ているなど、不可抗力と考えられる事情がある場合は、扱いが変わる可能性があります。
大切なのは、
「雨だから休業手当なし」
「台風だから必ず休業手当なし」
と一律に考えないことです。
その日の状況、会社の判断、現場の状態、代替業務の有無などを確認して、個別に整理する必要があります。
有給休暇を会社が一方的に使わせることは避けましょう
雨や台風で現場が休みになったときに、
「今日は有給休暇にしておいて」
という扱いをしている会社もあるかもしれません。
しかし、有給休暇は本来、労働者が請求する時季に与えるものです。厚生労働省も、年次有給休暇は原則として労働者が請求する時季に与えるものと説明しています。
そのため、会社が一方的に
「雨で休みだから有給にします」
と処理することは避けた方がよいです。
もちろん、従業員本人が希望して有給休暇を取得することはあります。
ただし、その場合も、本人の意思を確認し、記録を残しておくことが大切です。
また、年次有給休暇の計画的付与制度を使う場合は、就業規則への規定と労使協定の締結が必要とされています。
雨天時や台風時の休みを有給休暇で処理したい場合でも、会社がその都度一方的に決めるのではなく、制度として整える必要があるかを確認しましょう。
日給・時給・月給で確認するポイントが違います
建設業では、従業員の給与形態がさまざまです。
- 月給者
- 日給月給者
- 日給者
- 時給者
- パート・アルバイト
- 現場ごとの勤務者
などが混在している会社もあります。
雨天中止や台風による休みがあった場合、給与形態によって確認するポイントが変わります。
たとえば、月給者の場合、欠勤控除をするのか、休業手当の扱いになるのか、就業規則や賃金規程との整合性を確認する必要があります。
日給者や時給者の場合、
「働いていない日は支給しない」
と考えがちですが、会社都合で休ませた場合には、休業手当の検討が必要になることがあります。
大切なのは、給与形態だけで判断しないことです。
日給だから休業手当は不要。
時給だから休ませても無給。
月給だから何も確認しなくてよい。
このように単純に決めつけず、会社が休ませたのか、不可抗力なのか、本人都合の休みなのかを分けて整理しましょう。
「本人都合の休み」と「会社判断の休み」を分ける
雨の日や台風の日の休みで特に大切なのが、
本人都合の休みなのか、会社判断の休みなのか
を分けて考えることです。
たとえば、
本人都合に近いケース
- 本人が安全面や家庭の事情で休みたいと申し出た
- 通勤が不安なため本人が休みを希望した
- 本人が有給休暇を希望した
会社判断に近いケース
- 会社が現場中止を決めた
- 元請から中止連絡があり、会社が従業員を休ませた
- 作業予定がなくなり、会社が自宅待機を指示した
- 出勤予定だった従業員に、会社から休むよう連絡した
この区別があいまいだと、給与計算で迷いやすくなります。
特に、LINEや電話で
「明日は雨っぽいので休みにします」
とだけ伝えている場合、あとから
「会社都合なのか」
「本人の希望休なのか」
「有給なのか」
がわからなくなることがあります。
連絡の際には、休みの理由や扱いを明確にしておくことが大切です。
台風・大雨のときは安全配慮も大切です
雨や台風の日の対応では、給与や休業手当だけでなく、安全面も重要です。
建設現場では、強風や大雨の中で作業を続けると、転倒、墜落、資材の飛散、重機事故、感電などの危険があります。
無理に現場を動かすことで、従業員の安全が脅かされてしまっては本末転倒です。
そのため、会社としては、
- 警報が出た場合の対応
- 強風時の高所作業の中止基準
- 雨天時の足場作業の判断
- 資材搬入の延期判断
- 通勤経路の安全確認
- 現場責任者への連絡方法
- 元請との判断基準の共有
などを確認しておく必要があります。
天候による現場中止は、単なる労務管理ではなく、安全衛生にも関わる問題です。
就業規則・雇用契約書・現場ルールに落とし込む
雨天中止や台風時の対応は、その場その場で判断していると、どうしても対応がばらつきます。
「前は払ったのに、今回は払わないのか」
「あの人は有給扱いで、自分は無給なのか」
「現場によって連絡方法が違う」
「集合後に中止になった場合の扱いがわからない」
このような不公平感やトラブルを防ぐためにも、あらかじめルールを整理しておくことが大切です。
たとえば、就業規則や雇用契約書、社内ルールで次のような点を確認しておきましょう。
- 荒天時の出勤判断
- 現場中止の連絡方法
- 前日判断・当日判断の基準
- 会社集合後に中止となった場合の扱い
- 現場待機時間の扱い
- 自宅待機を命じる場合の扱い
- 休業手当の考え方
- 有給休暇を希望する場合の申請方法
- 日給者・時給者・月給者の給与計算方法
- 元請・下請との連絡体制
会社の規模が小さいほど、社長や現場責任者の判断で動くことが多いと思います。
だからこそ、最低限のルールを文書にしておくと、従業員にも説明しやすくなります。
給与計算で毎回迷わないために
雨天中止や台風時の対応は、給与計算とも大きく関係します。
たとえば、
- その日は出勤扱いなのか
- 欠勤扱いなのか
- 有給休暇なのか
- 休業手当なのか
- 一部勤務した時間があるのか
- 交通費はどうするのか
- 日給者・時給者の計算はどうするのか
これらが毎回あいまいだと、給与計算のたびに確認が必要になります。
また、従業員から給与明細について質問されたときに、会社として説明しにくくなります。
雨天中止が起こりやすい建設業では、給与計算の前提となる勤怠管理や休業時の扱いを整理しておくことが大切です。
雨天・台風時の対応チェックポイント
最後に、会社で確認しておきたいポイントをまとめます。
- 雨天・台風時の現場中止を誰が判断するか決めている
- 前日・当日の連絡時間を決めている
- 電話・LINE・メールなど連絡方法を決めている
- 既読確認や返信ルールを決めている
- 会社集合後に中止となった場合の扱いを決めている
- 現場待機時間の扱いを確認している
- 本人都合の休みと会社判断の休みを分けている
- 有給休暇にする場合は本人の意思を確認している
- 休業手当が必要なケースを確認している
- 日給者・時給者・月給者の給与計算ルールを確認している
- 就業規則や雇用契約書の内容と実際の運用が合っている
- 元請・下請との連絡体制を共有している
ひとつでも不安がある場合は、早めに見直しておくと安心です。
まとめ
建設業では、雨や台風、強風などにより、現場を休みにする判断が必要になることがあります。
そのときに、
「給与はどうするのか」
「休業手当は必要なのか」
「有給休暇として扱ってよいのか」
「朝集合後に中止になった場合はどうするのか」
をその場で考えていると、会社も従業員も不安になります。
雨天中止や台風時の対応は、毎回起こることではないかもしれません。
しかし、建設業では決して珍しいことではありません。
だからこそ、事前にルールを決めておくことが大切です。
「雨の日や台風の日の現場中止について、給与の扱いが毎回あいまいになっている」
「日給者・時給者・月給者の扱いを整理したい」
「有給休暇や休業手当の考え方を確認したい」
「就業規則や雇用契約書に、荒天時のルールを入れたい」
「建設業の勤怠管理や給与計算を見直したい」
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