パートさんの働き方が変わったら、社会保険も確認しましょう
中小企業がが知っておきたい「扶養」と「加入」のポイント
「パートさんから、扶養の範囲内で働きたいと言われた」
「人手不足でシフトを増やしたいけれど、社会保険の加入が気になる」
「週20時間を超えそうな人がいる」
「社会保険に入ると手取りが減るのでは、と従業員が心配している」
中小企業の経営者さまから、このようなご相談をいただくことがあります。
パート・アルバイトの方の働き方は、会社の状況や本人の生活環境によって変わることがあります。
子育てが落ち着いて、勤務時間を増やしたい。
人手不足で、会社としてシフトに多く入ってほしい。
最低賃金の引上げで、同じ時間働いていても年収見込みが変わった。
扶養の範囲内で働きたいので、勤務時間を調整したい。
このような場面では、単にシフトを増やす・減らすだけでなく、社会保険の加入や扶養の範囲、雇用契約書、給与計算もあわせて確認することが大切です。
今回は、パートさんの働き方が変わったときに、小さな会社が確認したい「扶養」と「社会保険加入」のポイントについてお伝えします。
「扶養内で働きたい」は、いくつかの意味が混ざりやすい言葉です
パートさんから
「扶養内で働きたいです」
と言われることがあります。
このとき注意したいのは、従業員本人が言う「扶養内」が、何を指しているのかが必ずしも明確ではないことです。
たとえば、
- 配偶者の税金上の扶養を気にしている
- 配偶者の勤務先の扶養手当を気にしている
- 健康保険の扶養を気にしている
- 年金の第3号被保険者のままでいたい
- 社会保険に加入すると手取りが減ることを心配している
- 年収106万円・130万円の壁を気にしている
など、さまざまな意味が含まれていることがあります。
会社側が
「扶養内ですね。大丈夫です」
と簡単に答えてしまうと、あとから本人の認識と違っていた、ということも起こり得ます。
そのため、まずは
「何を心配しているのか」
「どの範囲で働きたいのか」
「配偶者の勤務先にも確認が必要か」
を整理することが大切です。
社会保険の加入は、会社と本人で確認が必要です
パート・アルバイトの方でも、要件を満たす場合は、健康保険・厚生年金保険に加入することになります。
厚生労働省は、現行制度において、適用事業所に使用される正社員と、一定の要件を満たす短時間労働者は社会保険に加入すると案内しています。短時間労働者については、週の所定労働時間、賃金、学生でないこと、企業規模などの要件を確認する必要があります。
ここで大切なのは、
実際にたまたま残業が増えたかどうか
だけでなく、雇用契約上の所定労働時間や勤務実態を見ることです。
今後、社会保険の加入対象はさらに広がる方向です
パート・アルバイトの社会保険加入については、今後さらに対象が広がる方向です。
厚生労働省は、今回の改正により、短時間労働者の企業規模要件を縮小・撤廃し、賃金要件の撤廃もあわせて、短時間労働者が週20時間以上働けば、働く企業の規模にかかわらず社会保険に加入するようになると説明しています。企業規模要件は、10年かけて段階的に縮小・撤廃されるとされています。
また、いわゆる「年収106万円の壁」として意識されていた月額8.8万円以上の賃金要件についても、撤廃される方向です。撤廃時期は、法律の公布から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断するとされています。
つまり、今は対象になっていない会社や従業員でも、今後の改正により、社会保険加入の確認が必要になる可能性があります。
小さな会社でも、
「うちは人数が少ないから関係ない」
と考えるのではなく、パートさんの働き方や勤務時間を早めに整理しておくことが大切です。
130万円の壁にも注意が必要です
パートさんが気にされることが多いのが、いわゆる「130万円の壁」です。
厚生労働省は、年収130万円以上となると、週20時間未満で働く場合でも、配偶者の扶養、いわゆる第3号被保険者から外れ、国民年金と国民健康保険の保険料が発生すると案内しています。一方で、収入が一時的に上がった場合は、事業主の証明により引き続き扶養が認められる特例があるとされています。
また、厚生労働省の「年収の壁・支援強化パッケージ」でも、繁忙期に労働時間を延ばすなどして収入が一時的に上がった場合、事業主がその旨を証明することで、引き続き扶養に入り続けられる仕組みが案内されています。
ただし、扶養の判断は、本人の家族構成、配偶者の勤務先、加入している健康保険組合の取り扱いなどによって確認が必要になることがあります。
会社としては、本人に
「絶対に扶養から外れません」
「この金額なら大丈夫です」
と言い切るのではなく、本人にも配偶者の勤務先や健康保険組合に確認してもらいながら、勤務時間や収入見込みを整理することが大切です。
勤務時間が増えるときに確認したいこと
パートさんの勤務時間が増える場合、会社として確認したいのは社会保険だけではありません。
たとえば、次のような点も確認が必要です。
- 雇用契約書の所定労働時間
- 労働条件通知書の内容
- シフトの決め方
- 週の勤務時間
- 月の収入見込み
- 社会保険・雇用保険の加入対象
- 有給休暇の付与日数
- 残業の有無
- 通勤手当
- 給与計算方法
勤務時間が増えているのに、雇用契約書が昔のままになっている。
実際には週4日勤務なのに、契約書では週2日勤務のままになっている。
扶養内勤務の希望があるのに、年間の収入見込みを確認していない。
このような状態では、本人との認識違いが起こりやすくなります。
働き方が変わるときは、シフト表だけでなく、雇用契約書や労働条件通知書も見直しておきましょう。
本人との話し合いで確認したいこと
パートさんの働き方を変更するときは、会社側の都合だけでなく、本人の希望も確認することが大切です。
特に、扶養内勤務を希望している方の場合は、次のような点を確認しておくとよいでしょう。
- 年間でどのくらい働きたいのか
- 月ごとの収入上限を気にしているのか
- 配偶者の扶養を気にしているのか
- 社会保険加入を希望するのか、避けたいのか
- 勤務時間を増やしたいのか、現状を維持したいのか
- 繁忙期だけ増やすことは可能か
- 年末に向けてシフト調整が必要か
- 家庭の事情や子育て、介護との両立に不安がないか
会社としては、人手不足の中で「もっと入ってほしい」と思うこともあると思います。
一方で、本人が扶養や家庭の事情を考えながら働いている場合、急に勤務時間を増やすと不安につながることがあります。
だからこそ、早めに話し合い、働き方の希望と会社の必要な人員体制をすり合わせておくことが大切です。
「社会保険に入ると損」と決めつけない
パートさんから、
「社会保険に入ると手取りが減るので困ります」
と言われることがあります。
たしかに、社会保険に加入すると、健康保険料や厚生年金保険料の本人負担が発生するため、手取り額が変わります。
一方で、社会保険に加入することで、将来の年金が増えたり、病気やけが、出産で会社を休んだ場合の給付が充実したりするメリットもあります。厚生労働省も、厚生年金に加入すると基礎年金に加えて厚生年金が受け取れること、健康保険に加入すると病気やけが、出産のため会社を休んだ場合の収入保障があることを案内しています。
会社としては、
「加入すると損です」
「扶養内の方が絶対に得です」
と決めつけるのではなく、本人が働き方を選びやすいよう、必要な情報を整理して伝えることが大切です。
シフト管理と給与計算にも影響します
パートさんの社会保険や扶養の確認は、シフト管理や給与計算ともつながります。
たとえば、
- 週20時間を超えそうなシフトになっている
- 月ごとの勤務時間にばらつきがある
- 年末に近づくと扶養内勤務のために急にシフトを減らす
- 最低賃金の引上げにより、同じ時間でも年収見込みが増える
- 有給休暇を取得した日の給与処理がある
- 社会保険加入後の控除額を給与計算に反映する
このようなことがあるため、パートさんの働き方を考えるときは、採用・シフト・給与計算・社会保険手続きを別々に見るのではなく、つなげて考える必要があります。
特に小さな会社では、社長や事務担当者がすべてを兼ねていることも多いと思います。
毎月の給与計算で慌てないためにも、パートさんの勤務時間や収入見込みは、早めに確認しておくと安心です。
会社が確認したいチェックポイント
パートさんの働き方が変わるときは、次の点を確認してみましょう。
- 週の所定労働時間を確認している
- 実際の勤務時間と雇用契約書の内容が合っている
- 扶養内勤務の希望があるか確認している
- 本人が気にしている「扶養」の内容を確認している
- 社会保険加入の対象になるか確認している
- 雇用保険の加入対象も確認している
- 月ごとの収入見込みを確認している
- 年末に急なシフト調整が必要にならないようにしている
- 有給休暇の付与日数に影響がないか確認している
- 給与計算で社会保険料の控除を反映できるようにしている
- 勤務時間変更時に雇用契約書・労働条件通知書を見直している
- 本人に配偶者の勤務先や健康保険組合にも確認してもらっている
ひとつでも不安がある場合は、早めに見直しておくと安心です。
まとめ
パートさんの働き方が変わるときは、シフトだけでなく、社会保険や扶養、雇用契約書、給与計算もあわせて確認することが大切です。
「扶養内で働きたい」という言葉には、税金、社会保険、配偶者の勤務先の手当など、さまざまな意味が含まれることがあります。
会社としては、簡単に「大丈夫です」と言い切るのではなく、本人の希望や収入見込み、勤務時間、加入要件を整理しながら対応することが必要です。
また、今後は短時間労働者の社会保険加入対象がさらに広がる方向です。
小さな会社でも、パートさんの働き方や雇用契約書、シフト管理を早めに見直しておくと安心です。
「パートさんの勤務時間が増えてきた」
「扶養内勤務の相談を受けたが、どう説明すればよいかわからない」
「社会保険加入の対象になるか確認したい」
「雇用契約書やシフト管理を見直したい」
「給与計算と社会保険手続きをあわせて整理したい」
このようなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
社会保険労務士事務所キャリア・アヴニールでは、奈良県内の中小企業さまの実情に合わせて、パート・アルバイトの働き方、社会保険の確認、雇用契約書、シフト管理、給与計算の見直しをサポートいたします。

